pgrobertのブログ

好きな音楽や美術について。ときどき脱線。

ポルノグラフィティ「むかいあわせ」を語る。

今日の「DISPATCHERS」でついに「むかいあわせ」*1が披露される!!

……というわけで、今回は「むかいあわせ」について語る回。



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私は数多あるポルノグラフィティの楽曲の中でもこの曲が一番好きです。初めて聴いた瞬間からずっとそうなのですが、その理由は何だろうと考えたら、この曲が持つ「優しさ」に惹かれてるように思います。実際、ヴォーカルがやさしく包容力があるという評*2もあります。

アコギがメインで使われてるんだけど、どこか「和」な雰囲気(アコギというより琴に聴こえる瞬間もある)なのも、個人的なツボ。


こんな感じで曲の雰囲気も大好きなポイントなのですが、それ以上に何より歌詞に、自分はものすごく惹かれる。

以下、自分なりの(かなり堅い)分析です。


この歌詞の中では語り手が「内なる自己」と対話する様子が描かれている。
まず語り手は「ずいぶん長い旅」に出ていた“もう一人の自分”に「途中でそっと呼び掛けたけど前を見たまんまで応えなかった」から、「やっと会えた」と喜び「おかえり」と迎え入れる。
そこで“もう一人の自分”に「どこへ行けた? 何を見つけた? 誰かのこと好きになった?」と尋ねる語り手だが、彼は「ずいぶんと曇った顔してる」ために「もっと笑って話してごらんよ」と語りかける。
そして「いろんなことが何度も行ったり来たりで/幸せなこと悲しくなること 一本の道の上にあったりする」けれど「せっかくここまで来たんだから」「もう少しだけ歩こう」、「誰もがこの道を通るから 陽だまりの場所 尋ねて 向かってみよう」と提案する。
そんな中「心と心を重ねあわせ 耳を当てて聞き取る」と「『どうしてどうして強くなれない?』」という「消えそうな小さな叫び声がずっと聞こえてくる」。しかし「どこにも置き去りにできない」し「ましてや壊すための勇気なんてもっていない」ので、「真綿にくるんで この思い抱きかかえる」。
けれど、“もう一人の自分”は「また旅に出る」ため、語り手は「まだ見ぬ素敵な景色がある」から「後ろを振り向かずに」「信じて進んでみよう」と声をかけ、「さよなら」と送り出している。


……うーん、我ながら本当に堅い。(苦笑)

そもそも昭仁の「自分と向き合う」系の歌詞は遡ると「朱いオレンジ」に辿り着きます。

そして飽きるくらい自分と向き合った
あと何回くらい繰り返せば辿り着くの?

そこから「音のない森」で人生を深い森に例えて、もがき苦しむ様子*3を描きながら、

見渡せばそこにいくつもの足跡
誰もが通り行く場所なんだろう

という風に「誰もが通る場所」というモチーフを登場させます。

その後「君は100%」では

誰もが一度は彷徨い通る道だから
孤独を感じなくてもいい 怖くはない 一人じゃない

とされて、「カゲボウシ」*4では

長い道だから 忘れないで
越えたとき見える その景色を

上でも引用しましたが、「むかいあわせ」では

もう少しだけ歩こうよ せっかくここまで来たんだから
誰もがこの道を通るから 日だまりの場所 尋ねて 向かってみよう

そして最終的に「プリズム」で

「どこまで来れたのかな?」ずいぶん長い旅*5になったから
これまでの道のりの答え合わせしようと問いかける

というところまで結実します。最終的にそれまでのことを受け入れられるようになっている。*6
「むかいあわせ」はその地点に向かうまでの「過渡期」の歌詞とも言えます。
そこで出てくるのが「自分と向き合う」ということ。

昭仁は、自分と向かいあって深層心理に辿り着くことは、都合の悪いことも見てしまうだろうし、難しいことだけど、そんな一部分があったと認めてあげられるということができたときに、自分カウンセリングになるのではないかと言っています。*7


そんなところが、この曲に魅力を感じるところなんだろうなと思います。自分を受け入れる(=自己受容)って難しいことだけど、難しいと思ってる自分も含めて丸ごと受け止めることが大切というメッセージに心惹かれるんです。*8

*1:作詞・作曲:岡野昭仁

*2:「バックステージ・パス」2013年4月号

*3:「苦しくて叫ぶ声 届かない 何を待つ?/蜘蛛の糸? 青い鳥? 救いを求め天を仰ぐ」……ここで「蜘蛛の糸」と「青い鳥」を選ぶセンスたるや!

*4:NHKドラマ「つるかめ助産院~南の島から~」の主題歌として書かれた曲で、「むかいあわせ」はそのときのデッドストック。だから曲調・歌詞・雰囲気がとてもそっくり。ここで引用した「景色」も、「むかいあわせ」で「まだ見ぬ素敵な景色がある」と出てきます。

*5:この「ずいぶん長い旅」というのも、上の分析で引用した通り「むかいあわせ」に登場しますね。歌詞の連続性。

*6:昭仁の歌詞には他にも例えば、自問自答を歌詞にした「MONSTER」、「冒険をはじめたのは他でもない自分で」と歌う「BLUE SKY」もありますが、今回は割愛しました。

*7:「バックステージ・パス」2013年4月号より

*8:ちなみに、ベースを弾いている山口寛雄さん、ポルノの曲だとリバル・wataridori・バベルの風に参加してるのですが、V6の「メジルシの記憶」作曲・編曲、「way of life」作曲をされている方です。そんな繋がりも嬉しい。さらに補足すれば「メジルシの記憶」の作詞担当にはSkoop On Somebodyがいます。「カメレオン・レンズ」にコーラスで参加してる方々。うーん、繋がりがすごい!