pgrobertのブログ

好きな音楽や美術について。ときどき脱線。

ポルノグラフィティ「AGAIN」と「VS」と「一雫」と。

「AGAIN」が好きすぎる。


前も書いた通り、ポルノグラフィティで一番好きな曲は「むかいあわせ」なのですが、次点はと聞かれたら間違いなく「AGAIN」と答えます。

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RHINOCEROS』のリリースから早6年。「AGAIN」を聴かなかった日はほとんどないんじゃなかろうかというくらい毎日のように聴いてます。


さて、この曲を聴くと、まず初めのシタールに心を掴まれます。
例えばローリング・ストーンズの「黒くぬれ!(Paint it, Black)」みたいにどこか妖しげな雰囲気を醸し出すのにはシタールって効果てきめんだと個人的には思うんですけど、Queenの"White Queen (As It Began)"とか"Jealousy"とか*1、何より「横浜リリー」みたいにバラードで使われると寂寥感を増幅させる効果がありますよね。
あと、シタールに混ざって左右に振られる「チンッ...チンッ...」って音も好きです。

国道沿い 冷えた公園の 薄い乳色の朝もや
体の芯に残っている 痺れが脈打つ
(歌い出し)

国道沿い 見慣れたコンビニ トラックが巨体を震わせて
僕のすぐそばを走り去ってく AGAIN AGAIN
(ラスト)

ポルノグラフィティの曲で、ここまで情景描写が細かいのって珍しい気がします。
例えば「横浜リリー」であれば、舞台が横浜なだけに「横浜のホテル」「本牧」「汽車道の橋」と地名が歌詞に出てきますが、「AGAIN」みたいに匿名性がありながら具体的な情景描写ってあまりないような……しかも「見慣れたコンビニ」だから語り手の生活圏での出来事だというのが分かります。

そしてこの曲、構成も珍しいですよね。

Aメロ→Bメロ→間奏→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→Bメロ→ラストサビ→Aメロ

そもそも彼らの曲ってサビ始まりが多いし、「Aメロ→Bメロ」の流れを繰り返してサビに突入、ラストサビまでサビが一つしかない(=2番がない!)のはなかなかないどころかこの曲が唯一ではないか?っていう……最後にAメロがまた登場するのも滅多にないですし。

遥かな昔 海に沈んだ架空の街の地図で
旅をしているみたい
そこにあったはずの景色は変わり
僕は泣いているんだ AGAIN AGAIN

初めて聴いたときに衝撃を受けたフレーズ、「遥かな昔 海に沈んだ架空の街の地図」。
「架空の街」なのに「遥かな昔海に沈んだ」とはどういうことなのか?
でも架空とはいえ「海に沈ん」でしまったから「そこにあったはずの景色は変わ」ってしまったということなのか?
……こうやってモヤモヤと想像が広がっていく*2間に間奏に突入して……

本当のこと言うよ 時間と共に
地図は掠れていって 今では読めもしない
そこに何があったか 思い出せなくて
僕は泣いているんだ AGAIN AGAIN

そしてラストサビの「タネ明かし」。
実は地図は「掠れていって 今では読めもしない」ものになってしまっていて、景色が変わったから、ではなく「そこに何があったか 思い出せなくて」泣いているのだというどんでん返し。
景色が変わってしまったのも掠れて読めないのも「喪失感」の表れなんだけど、こちらの方がその深さがケタ違いというか……


ところで、タイトルになっている「AGAIN」は4回歌詞に登場します。

国道沿い 見慣れたコンビニ トラックが巨体を震わせて
僕のすぐそばを走り去ってく AGAIN AGAIN

そこにあったはずの景色は変わり
僕は泣いているんだ AGAIN AGAIN

そこに何があったか 思い出せなくて
僕は泣いているんだ AGAIN AGAIN

夜ごと君に話していた約束は今も果たせず
痛みに姿を変えて尚 AGAIN AGAIN

「何度も*3トラックが走っていく」「何度も泣いている」。
そして「夜ごと話していた約束は、果たせず何度も痛みに変わった」……

夜ごと、君に話してた
未来についての言葉は、
いくつかは本当になって、
いくつかはウソになってしまった。

以前とある方が指摘していた*4通り、「ダイアリー 00/08/26」のこのフレーズを思い起こします。

またこのフレーズ、「ひとひら」で

あれは夜な夜な語った夢と 果たせないままの約束たち

となり、そして「VS」では

夜ごと君に話した約束たち
今も果たせずにいて
邪魔するのは他人のこともあれば
意気地のない自分だったりした

さらに、

遥かな昔 海に沈んだ架空の街の地図で
旅をしているみたい

本当のこと言うよ 時間と共に
地図は掠れていって 今では読めもしない

「AGAIN」で重要な役割を持っていた「地図」。同じく「VS」で

本当 気楽でいいな
無邪気に描いた地図
クレームもつけたくなるが

と出てきます。
「ミュージシャンとしてこうなりたい」という「理想」「目標」を描いた「地図」。「気楽」に「無邪気」に描いたそれは、月日とともに読めなくなっていった。「理想」は「幻想」(=「遥かな昔 海に沈んだ架空の街の地図」)だった。
「VS」の歌詞を踏まえて「AGAIN」の歌詞を考え直すと、こういうことなのかな、って。そしてもっといえば、「約束」は「地図」に描かれていたとも捉えられると思います。

つまり、ポルノグラフィティとして掲げた理想・こんなミュージシャンを目指そうというお互いの約束。3人で活動を始めて、でもメンバーが抜けてかつての理想・約束は「ウソ」になり果たせなくなり、それでも戦いは止めない*5、そんな決意表明になっているのが「VS」という曲なのではないか、と……




ここからは余談。

「VS」のカップリング「一雫」には、こんな歌詞があります。

ギターはその夢を描くペンで
汚れた手で触れてないかと
今問いかけたらギターはどんな顔をするかな?


これもやはり「ダイアリー 00/08/26」の

あいかわらずGuitarを離さずにいるんだよ。
それは夢を描くペンでも
あったんだし、前からそうだし。

汚れた手でGuitarを
触ってはいないかな?
僕の声は君にどんな風に
聴こえてる? 響けばいいけど。

を彷彿させます。晴一自身、「一雫」を「ダイアリーシリーズ」と言っていたので、もろに一致するのも当然といえば当然なのかもしれないけれど、やはりギターが夢への道標だったんだなと改めて納得した次第なのです。

*1:厳密に言えばこの2曲は安物のギターを改造してシタールのような音が出るようにしているようですが。

*2:アトランティス的な何かのことなのかな?とも思いました。

*3:本来であれば、'again and again'で「何度も」という意味になります。

*4:http://nekomatsublog.seesaa.net/article/441660742.html 参照。圧倒的な分析。

*5:X JAPANYOSHIKIをモデルに「あのロッカー まだ闘ってっかな?」と歌った「プッシュプレイ」のアンサーといえる「あの少年よ こっちも戦ってんだよ」より