pgrobertのブログ

好きな音楽や美術について。ときどき脱線。

ペット・ショップ・ボーイズ「It's a Sin」を和訳。

youtu.be

When I look back upon my life
it's always with a sense of shame
I've always been the one to blame
For everything I long to do
no matter when or where or who
has one thing in common too

自分の人生を振り返ると
いつも罪の意識に苛まれる
いつだって僕は責められる側の人間
僕が待ち焦がれてることは何でも
いつどこで誰とであっても
一つの点で共通している

It's a, it's a, it's a, it's a sin
It's a sin
Everything I've ever done
Everything I ever do
Every place I've ever been
Everywhere I'm going to
It's a sin

それは、それは、罪だ
罪なんだ
僕が今までにしたこと全てが
僕がすること全てが
僕が今までに行ったことがある場所全てが
僕が行こうとする場所はどこでも
罪なんだ

At school they taught me how to be
so pure in thought and word and deed
They didn't quite succeed
For everything I long to do
no matter when or where or who
has one thing in common too

学校では教えられた
考え、言葉、行動の、いかに純粋であるべきかを
上手くいかなかったようだけど
僕が待ち焦がれてることは何でも
いつどこで誰とであっても
一つの点で共通している

It's a, it's a, it's a, it's a sin
It's a sin
Everything I've ever done
Everything I ever do
Every place I've ever been
Everywhere I'm going to
It's a sin

それは、それは、罪だ
罪なんだ
僕が今までにしたこと全てが
僕がすること全てが
僕が今までに行ったことがある場所全てが
僕が行こうとする場所はどこでも
罪なんだ

Father forgive me
I tried not to do it
Turned over a new leaf
then tore right through it
Whatever you taught me
I didn't believe it
Father you fought me
‘cause I didn't care
and I still don't understand

父なる神よ、お許しください
やらないよう努めました
心を入れ替えたつもりでしたが
すぐに破ってしまいました
あなたから教わったことはなんでも
僕には受け入れられませんでした
父なる神よ、ずいぶんやり合いましたね
あなたのことを気にかけなかったから
そして今でも理解しておりません

So I look back upon my life
forever with a sense of shame
I've always been the one to blame
For everything I long to do
no matter when or where or who
has one thing in common too

だから自分の人生を振り返ると
永遠に罪の意識に苛まれる
いつだって僕は責められる側の人間
僕が待ち焦がれてることは何でも
いつどこで誰とであっても
一つの点で共通している

It's a, it's a, it's a, it's a sin
It's a sin
Everything I've ever done
Everything I ever do
Every place I've ever been
Everywhere I'm going to
It's a sin

それは、それは、罪だ
罪なんだ
僕が今までにしたこと全てが
僕がすること全てが
僕が今までに行ったことがある場所全てが
僕が行こうとする場所はどこでも
罪なんだ

Confiteor Deo omnipotenti vobis fratres quia peccavi nimis cogitatione, verbo, opere et omissione. Mea culpa, mea culpa, mea maxima culpa.

全能の神と
兄弟の皆さんに告白します
私は思い、言葉、行い、怠りによってたびたび罪を犯してきました




先日5月12日に開催されたブリット・アワードの授賞式。そこでイヤーズ&イヤーズ(オリー・アレクサンダー)とエルトン・ジョンが"It's a Sin"をパフォーマンスしていました。それがとても素晴らしかったのですが、この曲のオリジナルはペット・ショップ・ボーイズ。PSBにゆかりのある二人*1によるパフォーマンスということで、素晴らしかったのも納得です。*2

youtu.be


さて、そんな"It's a Sin"ですが、リリースは1986年。全英1位になった曲です。元々レコード会社と契約するときのデモテープにも入っていたそうなので、PSBの曲の中でも最も古い曲のなかの一つと言えます。邦題「哀しみの天使」。
この曲の背景には、ニールの受けたカトリック教育があるといいます。今となってはニールが同性愛者というのは周知の事実ですが、同性愛はカトリックでは「罪」とされます。つまり、宗教上の「罪」ということですが、これは旧約聖書の「ソドムとゴモラ*3の話に由来します。
ところで、カトリックでは同性愛以外にも同棲や離婚が「罪」とされます*4。つまり「純潔であれ」*5ということになりますが、そうしたカトリック教育を受けたニールが自身の性的アイデンティティとの狭間で悩んだことは想像に難くありません。*6

ちなみに先日発売されたライブDVD/CDの'Discovery: Live In Rio'では、"It's a Sin"と"I Will Survive"*7マッシュアップされて*8披露されています。
このライブの前に発表されたのがニールの「カミングアウト・アルバム」と言われる'Very'。そのリリース後のライブで"It's a Sin"と"I Will Survive"がマッシュアップ(メドレー)で披露された、その意味。
ゲイ・アンセムとして名高い"I Will Survive"とのジョイントとその背景にあるメッセージを読み取ることは容易でしょう。ついでながら、イントロ部分の"I Will Survive"でのトラックの音は少し教会にあるパイプオルガンっぽいですね。


さて、曲の終わり(歌詞の最後のブロックに当たります)にはラテン語で何か唱える声が聞こえます。これはカトリックのミサの冒頭で、
「皆さん、神聖な祭りを祝う前に、わたしたちの犯した罪を認めましょう」
と司祭に促されて唱える祈り*9の一部です。*10
全文は以下の通り。

「全能の神と、
兄弟の皆さんに告白します。
わたしは、思い、ことば、行い、怠りによってたびたび罪を犯しました。
聖母マリア、すべての天使と聖人、そして兄弟の皆さん、罪深いわたしのために神に祈ってください」

正確には最初の「全能の神と」のみ司祭の台詞、その後「兄弟の~」が聴衆の唱える祈りです。


そして中間部の Father forgive me からの一節を、自分は「神への告白/懺悔」という形で訳しました。しかし、fatherには「神父」という意味もあるので、神父様への告白/懺悔と捉えることもできます。*11
カトリックにおいては洗礼後に犯した罪を神父様に告白することで赦しを得る「告解」というものがあります。この中間部はその「告解」であると考えられます。


PV*12は中世の宗教裁判がモチーフになっていて、最後にはニールが火あぶりの刑に処されます。まさに「(宗教上の)罪」で裁判にかけられて、有罪判決を受けるというわけです。また、終盤で描かれているのは「七つの大罪*13です。


最後に、当時の日本盤7インチシングルと12インチシングル、イギリス版のCDシングルです。某中古レコードショップで入手したとき、「日本でも12インチシングルが出てたんだ……!」と非常に驚いたことを覚えています。
B面は"You Know Where You Went Wrong"。当時の邦題「過ちの曲り角」。こちらに関しても、まさか邦題がついているとは思わず、当惑した記憶があります。

*1:エルトンとは"In Private"、"Alone Again (Naturally)"など数曲を一緒にレコーディングしていて、さらにPSBはエルトンがホストの番組に出演したことがあります。オリーはPSBの最新アルバム'Hotspot'収録の"Dreamland"にフィーチャリングされています。また彼は'It's A Sin'というドラマに出演していて、その主題歌"It's a Sin"をイヤーズ&イヤーズとしてカバーしています。

*2:ちなみにこのオリーとエルトンによるカバーは音源としてもリリースされています。プロデュースはPSBとスチュアート・プライス。

*3:PSBにはこの「ソドムとゴモラ」をモチーフにした"The Sodom and Gomorrah Show"というそのものずばりな曲も存在します。

*4:だからこそヘンリー八世の離婚問題に端を発してイギリス国教会が設立される。

*5:歌詞でも how to be so pure in thought and word and deed とあります。

*6:しかし本人は「カトリックの罪を歌った曲だけど自分とは無縁だ」と言っています。

*7:「恋のサバイバル」、グロリア・ゲイナー。

*8:マッシュアップというよりはほぼメドレーですが。

*9:ミサの式次第では「回心」と呼ばれる部分です。

*10:ネットに存在する"It's a Sin"の対訳で、この通りに訳されているものを一切見たことがないのですが、それが少し引っかかるところです……

*11:少なくともこの曲はキリスト教が大テーマなので、日本盤対訳のような「父への告白」ではないことは確かです。

*12:デレク・ジャーマン監督。

*13:「憤怒」「嫉妬」「強欲」「怠惰」「傲慢」「暴食」「色欲」。