pgrobertのブログ

好きな音楽や美術について。ときどき脱線。

ペット・ショップ・ボーイズ「It's Alright」を和訳。

Dictation being forced in Afghanistan
Revolution in South Africa taking a stand
People in Eurasia on the brink of oppression
I hope it’s gonna be alright
‘cause the music plays forever
(For it goes on and on and on and on)
I hope it’s gonna be alright

(Alright Alright Alright Alright)

アフガニスタンに無理やり下される命令
立場を明確にしている南アフリカの革命
抑圧に瀕しているユーラシアの人々
平和な世界がやってきますように
音楽は永遠に流れるから
(そう、ずっと流れ続ける)
平和な世界がやってきますように

(大丈夫、大丈夫……)

Forests falling at a desperate pace
The earth is dying and desert taking its place
People under pressure
on the brink of starvation
I hope it’s gonna be alright

絶望的なペースで倒れていく森林
地球は瀕死の状態で 取って代わっていく砂漠
飢餓の危機にある
抑圧下にある人々
平和な世界がやってきますように

Generations will come and go
but there’s one thing for sure
Music is our life’s foundation
and shall succeed all the nations to come
I hope it’s gonna be alright
'cause the music plays forever
(For it goes on and on and on and on…)
I hope it’s gonna be alright
(On and on and on…)
‘Cause the music plays forever
(For it goes on and on and on and on and on and on and on)

世代は移り変わる
けど一つ確かなことがある
音楽は僕らの人生の拠り所だ
そして全ての人々に受け継がれていく
平和な世界がやってきますように
音楽は永遠に流れるから
(そう、ずっと流れ続ける…)
平和な世界がやってきますように
(ずっと流れ続ける…)
音楽は永遠に流れるから
(そう、ずっと流れ続ける)

The year three thousand may still come to pass
but the music shall last
I can hear it on a timeless wavelength
never dissipating but giving us strength
(It’s alright)
I hope it’s gonna be alright
(Alright Alright Alright Alright)

3000年の年月が経とうとも
音楽が絶えることはないだろう
時を超えた波に乗って
消え失せることなく僕らに力を与えてくれるのが聞こえる
(大丈夫だ)
平和な世界がやってきますように
(大丈夫、大丈夫……)


youtu.be



1989年という時代の転換点*1でリリースされたペット・ショップ・ボーイズの"It's Alright"。後に2006年リリースのアルバム'Fundamental'でもコラボすることになるトレヴァー・ホーンによるプロデュースで全英5位を記録。
オリジナルは1987年リリースの'Acid Tracks'というアルバムに収録された"It's All Right"(Sterling Void feat. Paris Brightledge)*2。PSB版は1988年リリースのアルバム'Introspective'*3が初出。アルバムヴァージョンはオリジナルに忠実な仕上がりになっています。そしてシングルリリースにあたって、いくつか歌詞が加わり、アレンジも変更になりました。

PSBのアルバムヴァージョン。*4
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オリジナルの"It's All Right"。*5
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ニール:ちょっぴり恐いのは、レコーディングすると歌詞はあっと言う間に古びてしまうってこと。けど、もう色あせることはないと思う。当時は、アフガニスタンの圧政があり、南アフリカの革命があった。今もアフガニスタンは動乱の中にあるし、アフリカ南部の国ジンバブエでは紛争が起きている。“I hope it's going to be alright(平和な日々がやってくる)”。この曲がリリースされたときにはアフガニスタン問題はすべて終わったかに見えた。この曲で歌ったのはソビエト軍のアフガン侵攻だったからね。

クリス:リリースは何年だっけ?

ニール:89年。

クリス:この曲は、愛は最後に勝利する、という思想を見事に表現している。今とは違うと思うけど、1989年には、「いつか世界は素晴らしい場所になる」っていう強い期待感が、確実に存在していたんだ。

ニール:そう、この曲は実にタイムリーだった。変革を歌った作品だし、1989年の末には、ソビエト連邦が崩壊し、ベルリンの壁が倒され、チャウシェスクが銃殺された。世界全体が未来を楽観していた。興味深いことに、この曲はヘリコプターの音と共に始まって、軍事的な色調を帯びている。それは、変革を歌っているけど、同時に、音楽がどれほど僕たちの魂を体現しているかとか、生命の連続性といったことをも表現している。音楽が存在する限りすべては大丈夫、そこには僕たち自身が存在しているのだから。

クリス:だからこそ、極右的なイスラム国家では御法度なんだ。タリバンが音楽を禁じた理由はそれさ。だろ? それこそが理由だと思うよ。


上のニールとクリスのコメントは、2003年リリースのベスト盤'PopArt'のブックレットに載っていたもの。ニールのコメントにあるソ連崩壊は1991年なので、冷戦が終結したマルタ会談と勘違いしてるのかな? と思います。
何にしても、1989年は東欧諸国で共産主義政権が打倒された年。チャウシェスクの処刑もベルリンの壁崩壊も、その一連の東欧革命の流れに位置づけられます。
そしてニールのコメントにもある通り、1989年にはアフガニスタンからソ連軍が撤退、'PopArt'リリース前の2001年には同時多発テロをきっかけにしてアフガニスタン紛争が勃発。そして先日米軍撤退に合わせてタリバンが再び政権を掌握し、今も混乱を極めているのは承知の通りです。
また、アフガニスタンのくだりのほかに、環境に関してのくだりについても、先日IPCCが「異常気象が頻発するだろう」と警告を発したばかり。

リリースから32年も経つのに、未だに歌詞が古さを帯びず喫緊の課題に感じられるのは果たしていいことなのか……考えさせられる今日この頃です。


追記:この記事を公開した後、「タリバン、人気歌手を殺害…「イスラムでは音楽は禁止」と述べた数日後に」という記事を目にしました。→https://www.businessinsider.jp/post-241317
ニールとクリスの言葉を噛み締める今日この頃です。

*1:世界に関しては記事内で述べていますが、日本はというと昭和天皇崩御され平成という新たな時代に入り、つまり日本にとっても転換期だった年です。

*2:二人とこの曲を共作しているのはPSBの作品のリミックスを手がけたことのあるMarshall Jefferson。

*3:そういえばこのアルバム、"Always On My Mind"は言わずと知れたカバー曲だし、"I'm Not Scared"は提供曲のセルフカバーだし、6曲中3曲がカバー曲だとこの記事を書いていて気付きました。

*4:アルバムヴァージョン、シングルヴァージョン以外にPSB版のリミックスバージョンはいくつか存在しますが、オリジナルを歌っているSterling Voidによるものもあります。

*5:オリジナルのリミックスバージョンは多数存在しますが、そのミキサーの中には'New York City Boy'をPSBと一緒に作ったDavid Moralesもいます。