pgrobertのブログ

好きな音楽や美術について。ときどき脱線。

ペット・ショップ・ボーイズの今年2枚目のシングル「Dancing star」、全曲レビュー。

昨日4月26日にペット・ショップ・ボーイズの最新アルバム'Nonetheless'がリリースされました。26日になった瞬間、Spotifyでは配信が始まったので一足先に(?)聞きました。月並みな感想ですが最高ですね。もっと聴きこんで、Annuallyが届いたらまたいずれアルバムレビューを書こうと思います。

また、アルバムに先立って4月3日にはセカンド・シングル"Dancing star"がリリースされました。
このシングル"Dancing star"については、全曲の和訳を当ブログでは掲載しています。今回の記事では、改めて各曲の雑感というか印象というかレビューを書きたいと思います。


↓"Dancing star"の和訳です。
pgrobert.hatenablog.com

↓"Sense of time"の和訳です。
pgrobert.hatenablog.com

↓"If Jesus had a sister"の和訳です。 pgrobert.hatenablog.com

1. Dancing star


この曲はソ連のダンサー、ルドルフ・ヌレエフをモデルに作られた曲です。彼についてあまりよく知らなかったので、調べて簡単に生涯をまとめてみます。

彼は1938年、走行中のシベリア鉄道の中で生まれ、バシキール自治共和国*1の首都ウファで育ちました。
6歳のとき、ウファの劇場でバレエを見てダンサーになることを決意、父親には反対されたものの、地元でバレエのレッスンを受けました。
やがてレニングラードのバレエ学校*2編入し、名教師アレクサンドル・プーシキンに指導されました。卒業後、1958年キーロフ・バレエ団*3ソリストとして入団。

1961年、キーロフ・バレエ団初のパリ公演では「ダンサーが国外でどのようにふるまうべきかKGBから指令があったにもかかわらず、ヌレエフはフランスのダンサーと交流し、街を散策し、ホテルには決められた時間よりも遅く戻った」。*4
あるいは、「ヌレエフは、外国人との交際に関する規則を破り、パリのバーに頻繁に出入りしていたとされ、キーロフの経営陣と彼を監視していたKGBの諜報員を憂慮させた」。*5
そしてパリ公演を終えた一行が、ル・ブルジェ空港から次の公演地ロンドンへ出発しようとした時、彼だけはモスクワで踊るよう帰国を命じられたのです。大事な公演があるとか母が危篤だとか理由をつけられたようですが、彼はソ連からの「国外出国禁止命令」だと理解し、そのままフランスに留まる=亡命することを選択しました。

According to a Reuters report from Paris he decided, just as a plane was leaving there with the other members of the company, to seek political asylum in France.
(中略) The rest of the company boarded the aircraft and Nureyev then dashed through the barrier where two French police inspectors were standing and shouted in English: “I want to be free.”*6

当時の新聞にはこう書いてあったみたいです。ここにはル・ブルジェ空港ってありますが、PSBはオルリー空港と歌っています。ここの齟齬はいまいちよくわかりません……

さて、ソ連から亡命して以降は、ロンドンでマーゴ・フォンテインと出会ってロイヤル・バレエ団で共演したり、コペンハーゲンで知り合ったエリック・ブルーンとは、密な関係を持ったりしました。 そして最終的に1993年AIDSで亡くなります。

彼はアマルフィに邸宅を持っていたようで、それが冒頭の歌詞に反映されています。

2. Sense of time


タイトルはSense of timeですが、曲中ではNo sense of timeと言っていて、全く真逆です。

全体的に歌詞がめちゃくちゃ重いのですが、背景とかの推測も何もできないので、きっとAnnuallyで解説されているはず……!と信じて、この項は終了します。


3. If Jesus had a sister


表題よりも好きな曲です。たまにある、カップリングの方が好きになる現象。(笑)
PSBの曲でイエスが登場する曲というと"Searching for the face of Jesus"*7がありますが、あれはエルビス・プレスリーについて歌った曲なので、直接イエスに言及する曲としては初めての曲になります。

さて、この曲についてなのですが、歌詞を読み解いて衝撃を受けたのはかなり久々でした。
そもそも、現代の視点で「もしイエスに妹がいたら……」と言うなら If Jesus had had a sister じゃなきゃおかしいんですよね。過去の事実に反することを言うなら仮定法過去完了を使うので。でもこの曲は仮定法過去が使われているので、現代から振り返って想像しているわけではなく、イエスがいた当時の視点で「もしイエスに妹がいたら……」と想像する曲になっている。
実際 Of course he has a mother と言っているので、当時の視点であることは間違いない。*8

そして……

Climbing up a mountain
preaching to one and all
It might sound like a humble sermon
but pride comes before a fall
The truth may still elude us
but it’ll catch up in the end
or my name isn’t Judas
and Jesus is not my friend

山上に登って
誰彼問わず説教をして
謙虚な説教に聞こえるかもしれないが
心の高慢は倒れに先立つ
真実はまだ見えてこないかもしれないが
最終的には追いつくだろう
もしくは私の名前はユダではないし
エスは私の友ではない

ここに来て、語り手がユダであることが判明します。大どんでん返し。「AGAIN」を初めて聴いた時にも同じ感覚を味わいましたが、これもまた衝撃。
ニールのストーリーテリング力をまざまざと突きつけられました。

*1:バシコルトスタン共和国ロシア連邦を構成する国の一つ。

*2:サンクトペテルブルクのワガノワ・バレエ・アカデミー

*3:マリインスキー・バレエ団

*4:「なぜバレエダンサーのルドルフ・ヌレエフは没後26年の今も世界中で人気なのか」https://jp.rbth.com/arts/81952-bareedansa-rudorufu-nureefu-sekaijyuu-de-ninki

*5:ルドルフ・ヌレエフ命日」https://www.j-news-uk.com/single-post/%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%8C%E3%83%AC%E3%82%A8%E3%83%95%E5%91%BD%E6%97%A5

*6:"Russian ballet star Rudolf Nureyev asks for asylum – archive 1961" https://www.google.com/amp/s/amp.theguardian.com/stage/from-the-archive-blog/2021/jun/16/rudolf-nureyev-asks-for-asylum-ballet-1961

*7:"I get along"カップリング。

*8:現代から振り返るなら he had a mother と過去形でなくてはおかしい。

ペット・ショップ・ボーイズの4年ぶりシングル「Loneliness」、全曲レビュー。

今年の1月31日、ペット・ショップ・ボーイズが4月26日に4年ぶりの最新アルバム'Nonetheless'をリリースすると発表され、同時にアルバムから先行シングル"Loneliness"がデジタルリリースされました。また、4月3日にはセカンド・シングル"Dancing star"もデジタルリリースされました。

さて、その先行シングル"Loneliness"は2月16日にCDシングルとしてリリースされましたが、前回のアルバム'Hotspot'からは全てのシングル*1がヴァイナルリリースされていたのに、今回の"Loneliness"がヴァイナルになっていないのは不思議な感じがします……そのうち出たりするのかな?

このシングル"Loneliness"については、全曲の和訳を当ブログでは掲載しています。今回の記事では、改めて各曲の雑感というか印象というかレビューを書きたいと思います。

↓"Loneliness"の和訳です。
pgrobert.hatenablog.com


↓"Party in the Blitz"の和訳です。
pgrobert.hatenablog.com

↓"Through You (extended mix)"の和訳です。 pgrobert.hatenablog.com

1. Loneliness


とにかく最高。ファーストシングルとしてはこれまでにない満足度があります。前回までのStuart三部作からのファーストシングル*2もPSBらしくどれも好きではあるのですが、ここに来てこんな曲を作れる彼らがすごい!
そしてこの"Loneliness"は、既に発表されているアルバムのトラックリストによれば1曲目になるみたいですね。アルバム1曲目がファーストシングルになるのは'Electric'の時の"Axis"以来です。
個人的には、PSBというグループについて世間一般でイメージされるような「いかにも」なエレクトロ・ポップももちろん好きですが、「オーケストレーションとダンストラックのコラボレーション」な今回のアレンジはもっと大好物です。

この「オーケストレーションとダンストラックのコラボレーション」に関しては、The Guardianのインタビュー記事*3にこんなことが書かれていました。

.... And they brought their lockdown fruits to a new producer, James Ford, having rated his knack for strings on albums by the Last Shadow Puppets and Arctic Monkeys. “Also being in Simian Mobile Disco, we knew he was really good at analogue synth programming,” says Lowe. “The combination of those two things is basically the sound of the Pet Shop Boys: electronics with strings.”
The result, new album Nonetheless, is gorgeous: buoyant with optimism, it basks in songwriterly lusciousness after a trilogy of harder albums with producer Stuart Price, Electric (2013), Super (2016) and Hotspot.

……そして彼らはロックダウンの成果を、ラスト・シャドウ・パペッツとアークティック・モンキーズのアルバムでストリングスの才能を評価した新しいプロデューサー、ジェームス・フォードにもたらした。「Simian Mobile Discoにも出演していたので、彼がアナログ・シンセ・プログラミングに非常に優れていることはわかっていた」とロウは言う。「これら二つの要素を組み合わせたもの、つまりストリングスを備えたエレクトロニクスが、基本的にペット・ショップ・ボーイズサウンドだ。」
その結果、ニュー・アルバム"Nonetheless"はゴージャスだ。楽観的で軽快で、"Electric"(2013)、"Super"(2016)、"Hotspot"という、プロデューサーのスチュアート・プライスとのハードなアルバム三部作を経て、ソングライターとしての甘美さに包まれている。

クリスは「ストリングスを備えたエレクトロニクス」がPSBサウンドのベースだと、このインタビューで言っています。個人的には自分のPSBサウンドの原体験である'Nightlife'*4を思い出させて「どこか懐かしさ」を感じたんだな*5と合点がいった次第です。

さて、

Like Ringo walking by the canal
downcast and alone
You’re taking time to play that part
A man who skims a stone

この一節は"A Hard Day's Night"(『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』)のこの場面のことらしいです。
youtu.be
確かにリンゴ・スターがとあるインタビューでこんなことを言っていたようで、*6

The scene in 'A Hard Day's Night,' the one I got all the credit for was the walking by the canal with the camera-- the lonely guy scene-- That came about because I came to work, very unprofessionally, straight from a nightclub. And I was a little hungover to say the least, you know. I was just so out of it so they said, 'Let's do anything.' So my version of it was 'Just let me walk around and film me.' And why I look so cold and dejected is because I felt like shit. So, no acting going on there. I just felt so bad.

このインタビューの中で彼は walking by the canal とか the lonely guy scene とか言っているので、ものすごく"Loneliness"の歌詞と符合しています。
ところで"Loneliness"の歌詞といえば、

Everybody needs time to think
Nobody can live without love

誰しも考える時間が必要だ
愛なしでは誰も生きられない

ここのフレーズは、実は彼らが一番この曲で言いたいことなんじゃないかと勝手に思ってます。この部分だけアレンジが変わってグッと聴かせる感じになってますし。


2. Party in the Blitz


初めてこのシングルを聴いたとき、実はあまりハマらなかったんですけど、何回も聴くうちに「面白い曲だな」と思うようになりました。いわゆる「スルメ曲」ですね。(笑)
さて、「ザ・ブリッツ」とはナチス・ドイツによるロンドン大空襲のことで、1940年9月7日から1941年5月10日まで続きました。歌詞に出てくるMornington Crescentはこの空襲の最初期に爆撃されました。*7

そんな戦火にあってパーティに興じる人々。生きるか死ぬか、紙一重で決まる状況下では刹那の愉楽こそ全て、という感じなんでしょうか。でも「大事なところは縮んで」る(Dick shrinking)ので、パーティをしつつも緊張感はすごいんでしょうね。
そうした状況で「実存主義を説明しようとしていた」(I was trying to explain / existentialism)のは、戦火では個人なんて吹けば飛んでしまうけれども、それでも人間としての実存在は消えないから、ということなのかな……


3. Through You (extended mix)


曲調に騙されそうになりますが、この曲の語り手はなかなかに陰険な人物のようです。
何と言っても、

It’s not enough to succeed
others must fail
There is your mantra
bitter and stale
It’s not enough that you win
others must lose
Dreams have to die
What’s your excuse?

成功するだけでは十分じゃなくて
他の人たちが失敗しなきゃいけない
苦く古臭くなった
君のマントラがある
勝つだけでは十分じゃなくて
他の人たちが負けなきゃいけない
夢は消えてなくなる必要がある
言い訳はなんだい?

ですからね。徹底的に自分以外の不幸を願っている。
個人的には「マントラ」というと

記憶の底に 目を凝らし 潜って
埋もれたマントラを探して唱え始めよ

という、ポルノグラフィティREUNION」の一節を思い出します。どちらも「古くなっている」という点では共通しますが、かたや「古臭い」と嘲笑し、かたや「記憶のそこから探り当てろ」と鼓舞する。
ここだけ取ってみても、"Through you"の語り手の「邪悪さ」がよく分かります。
ところで、extended mixってことは「ノーマルヴァージョン」もあるってことなんですかね?
"The Way Through The Woods"は初めLong versionしか出なかった*8けど、後で日本盤'Elysuim'のボーナストラックになった、みたいな例もありますし……

*1:"Dreamland"、"Burning the heather"、"Monkey business"、"I don't wanna"。しかも"Burning the heather"に関しては、フィジカルリリースが7インチヴァイナルのみでした。

*2:'Electric'(2013)なら"Axis"、'Super'(2016)なら"The Pop Kids"、'Hotspot'(2020)なら"Dreamland"。

*3:‘Music has ceased to be ageist’: Pet Shop Boys on 40 years of pop genius – and their hopeful new album https://www.theguardian.com/music/2024/feb/03/pet-shop-boys-nonetheless-interview

*4:'Nightlife'が原体験という話は https://pgrobert.hatenablog.com/entry/2022/02/23/232528 参照。

*5:和訳記事参照。

*6:以下の引用は「The Beatles Ultimate Experience」 http://www.beatlesinterviews.org/dbmovies.html より。

*7:リンク先、空襲直後の画像が見られます。→https://en.m.wikipedia.org/wiki/File:London_Blitz_9_September_1940.jpg

*8:"Winner"のカップリング。

ペット・ショップ・ボーイズ「If Jesus had a sister」を和訳。

ペット・ショップ・ボーイズの4月リリースになる最新アルバム'Nonetheless'からのセカンド・シングルとなった"Dancing star"のカップリングである"If Jesus had a sister"を和訳しました。

「もしイエスに妹がいたら……」という空想に基づく歌詞になっていますが、最後の最後で語り手がユダであると判明します。
「偽物のくせにメシアを名乗りやがって……」という歯ぎしり感からイエスの敵対勢力が主人公だとは思いましたが、まさかユダとは。。。。


youtu.be


If Jesus had a sister
would she bring him down to earth?
Say “Jesus, I’m your sister
I can say for what it’s worth
You might find immortality
but what’s the good of that to you?
Your father is a carpenter
why don’t you get a trade too?”

もしイエスに妹がいたら
彼女は彼を夢から現実に引き戻すだろうか
「イエス様、私はあなたの妹です
一応、言っておきますけど
あなたは不死を見つけるかもしれません
でも、それがあなたに何の利益があるのですか?
あなたの父親は大工です
あなたも職に就いたらどうですか?」

The authorities won’t tolerate
these claims he tends to make
Calls himself a Messiah
when he’s assumed to be a fake

If Jesus had a sister
she’d say “Get real, Mister!”

偽物だと思われてるのに
自分をメシアと呼ぶような
彼がしがちな主張を
当局は容認しないだろう

もしイエスに妹がいたら言うだろうね
「現実を見てよ、何様なの!」って

Of course he has a mother
and though she’s very nice
She never seems to offer
any sensible advice
If Jesus had a sister
she might put up a fight

もちろん彼には母親がいて
とてもいい人だが
良識的な助言は
全くしないみたいだ
もしイエスに妹がいたら
歯向かうかもしれない

Climbing up a mountain
preaching to one and all
It might sound like a humble sermon
but pride comes before a fall
The truth may still elude us
but it’ll catch up in the end
or my name isn’t Judas
and Jesus is not my friend

山上に登って
誰彼問わず説教をして
謙虚な説教に聞こえるかもしれないが
心の高慢は倒れに先立つ
真実はまだ見えてこないかもしれないが
最終的には追いつくだろう
もしくは私の名前はユダではないし
エスは私の友ではない

If only he had a sister
to say “Get real, Mister!”

ただ彼にこう言ってくれる妹さえいてくれたら
「現実を見てよ、何様なの!」って

ペット・ショップ・ボーイズ「Sense of time」を和訳。

ペット・ショップ・ボーイズの4月リリースになる最新アルバム'Nonetheless'からのセカンド・シングルとなった"Dancing star"のカップリング、"Sense of time"を和訳しました。

曲だけ聴くと若干アンビエント風味で'Disco 3'に入っててもおかしくなさそうなアレンジですが、歌詞がめちゃくちゃ重い。テーマは"Invisible"と同じなのかな……?とぼんやり思っているところです。

youtu.be

I was thinking about a dream I had
I had it again today
where I was losing all sense of time
the hours slipped away
I was wondering if you were here
somewhere nearby
but I couldn’t remember where I was
or if we’d said goodbye

自分が見た夢のことを考えていた
今日もまた見た
時間の感覚が全部なくなって
時間がどんどん過ぎていく
君がここに、近くのどこかに
いるんじゃないかと思ったけど
自分がどこにいるのか思い出せなかった
さよならを言ったかどうかも

No sense of time
Not even night and day
No sense of time
What time is it anyway?

時間の感覚がない
昼か夜かすら分からない
時間の感覚がない
何にせよ、何時なんだ?

I was drifting through
an ancient town
speaking schoolboy French
listening to the avant garde
trying to make sense
Though everything
was falling apart
there was music in the streets
and dancing
in a different party
to repetitive beats

僕は古代都市を
漂っていた
お子様フランス語を話していた
アヴァンギャルドを聴いていた
意味を理解しようとしていた
すべてが崩壊していたけれど
通りには音楽があり
繰り返されるビートに合わせて
違うパーティで
踊っていた

No sense of time
No perfect tense
No sense of time
It all made perfect sense

時間の感覚がない
完了時制なんてない
時間の感覚がない
全てが理にかなっていた

No sense of time
No sense of time

時間の感覚がない
時間の感覚がない

In these imminent dark ages
if you find it too bizarre
and nothing
seems to make sense any more
just remember who you are

この差し迫った暗黒時代に
あまりに異様で
意味をなすものが
全くないと感じられたら
自分が何者なのかをただ思い出そう

I didn’t know what year it was
I wondered if I’d died
and found a world
where living and dead
were walking side by side

それが何年なのか分からなかった
僕は死んだのだろうか
そして死者と生者が
一緒に歩いている
世界を見つけた

No sense of time
Not even night and day
No sense of time
What time is it anyway?
No sense of time
No perfect tense
No sense of time
It all made perfect sense

時間の感覚がない
昼か夜かすら分からない
時間の感覚がない
何にせよ、何時なんだ?
時間の感覚がない
完了時制なんてない
時間の感覚がない
全てが理にかなっていた

ペット・ショップ・ボーイズ「Dancing star」を和訳。

ペット・ショップ・ボーイズの4月発売になる最新アルバム'Nonetheless'から、昨日配信でリリースされたセカンド・シングル"Dancing star"を和訳しました。

この曲は、ソ連から亡命して以降ロイヤル・バレエ団などで活躍し、AIDSで亡くなったルドルフ・ヌレエフ(1938-1993)をモデルに作られた曲です。

この曲では、初めと終わりにカモメの鳴き声がします。PSBでカモメの鳴き声というと"Go West"を連想しますが、そういえば"Go West"は1993年のリリースでしたね。PVはソ連崩壊後のロシアはモスクワ・赤の広場で撮られているし、AIDS蔓延後のペーソスが込められているし、そこまで関連していたり……?
メレエフ自身実際に"Go West"した人だし、やっぱり何かしら意味が込められてると見て間違いないかな?

youtu.be


Amalfi
Blue skies, blue sea
It’s a long way from Siberia
How did you get here?

アマルフィ
青い空に青い海
シベリアから遠く離れたところ
どうやってここに来たんだい?

Jumped the barrier at Orly Airport
Claimed political asylum there
Took all the KGB boys by surprise
I think they thought that you would never dare
But you knew you had to take a risk
You broke the rules over and over again
A fiery talent with a reputation
A trouble-maker among sombre men

オルリー空港の柵を飛び越えて
亡命からの保護を求めて
KGB男子を出し抜いたんだ
彼らは君がそんなことしないんじゃないかと考えてたんだと思うけど
危険を冒さなきゃいけないと分かってたんだよね
何度も何度もルールを破ってさ
名声を伴った激しい才能
物憂げな男たちの間のトラブルメーカー

Dancing star
That’s what you are
Came so far
You’re a dancing star
Dancing star
More power than a tsar
Yes you are
You’re a dancing star

ダンシングスター
それが君だ
遠くまでやってきた
君はダンシングスター
ツァーリよりも力がある
そう、君は
君はダンシングスター

When the streets of London sang with pop stars
Well the truth is that they always do
In the 60s you could feel the freedom
and the brightest star in town was you
Always a scandal and a real heart-breaker
Boys and girls both threw themselves at you

ロンドンのストリートがポップスターと歌っていた頃
真実は彼らがいつもすることだ
60年代、君は自由を感じることができた
そして街で一番輝いていたスターは君だった
いつもスキャンダルで本当に心が張り裂けそうで
女子も男子もみんな君に飛びついていた

Dancing star
That’s how bright you shine...
Dancing star
...when all your stars align
Dancing star
More power than a tsar
Yes you are
You’re a dancing star

ダンシングスター
君はどれだけ輝くのか
ダンシングスター
全ての星が一直線に並んだとき
ダンシングスター
ツァーリよりも力がある
そう、君は
君はダンシングスター

Dancing star
Dancing star
Dancing star
Yes you are
You’re a dancing star

ダンシングスター
ダンシングスター
ダンシングスター
そう、君は
君はダンシングスター

Paris
New York
Copenhagen
Vienna
San Francisco
St Petersburg
The world wanted you
How bright you shone
and still shine now
although you’ve gone

パリ
ニューヨーク
コペンハーゲン
ウィーン
サンフランシスコ
サンクトペテルブルク
世界は君を求めていた
どれだけ輝いていたことか
そして今も輝いている
君はいなくなったけど

Dancing star
That’s what you are
Came so far
You’re a dancing star
Dancing star
More power than a tsar
Yes you are
You’re a dancing star

ダンシングスター
それが君だ
遠くまでやってきた
君はダンシングスター
ツァーリよりも力がある
そう、君は
君はダンシングスター

ポルノグラフィティのライブに行った。【3月31日有明アリーナ公演】

〈以下、ネタバレ感想を含みます。〉


ポルノグラフィティのライブツアー「PG wasn't built in a day」の埼玉スーパーアリーナ公演(2/11)と有明アリーナ公演(3/31)に行ってきました。*1ポルノの同じツアーで複数回参戦するのは「UNFADED」以来。オーラス参戦は初めて。

今回の記事では、最終日公演を中心に、場合によっては埼玉の話も織り交ぜながら振り返っていきたいと思います。


それではまずセトリから。


1. Century Lovers
2. テーマソング
3. キング&クイーン
4. Mugen
5. REUNION
6. 俺たちのセレブレーション
7. アニマロッサ
8. メリッサ
9. sheep~song of teenage love soldier~ (Acoustic ver.)
10. ジョバイロ (Acoustic ver.)
11. フラワー
12. 夜間飛行
13. オレ、天使
14. 170828-29
15. アビが鳴く
16. 解放区
17. 空想科学少年
18. ハネウマライダー
19. アポロ
20. サウダージ
21. オー!リバル

アンコール
22. アゲハ蝶
23. ジレンマ


では、簡単に感想です。


1. Century Lovers

ファンファーレ的なメロディからメンバー登場、ライブがこの曲でスタート。会場に響き渡る肉声の「Fu Fu!」は圧巻でした……

2. テーマソング

「やっと一緒に歌えるね!」と言う昭仁の声が嬉しそうで嬉しそうで。自分としても、やっと声出して歌える喜びに鳥肌が立ちっぱなしでした。

3. キング&クイーン

色んな意味でものすごく久々に聴きました。

4. Mugen

ここまでオーディエンスが一緒に歌う曲が連続してたのは、やっぱりポルノチームもみんなで一緒に声出して楽しみたいっていう思いがあったんだろうなとぼんやり思ったり。
埼玉では「冷えた指先を温め」ずに、「一人きりで生きられないほどは弱くはないのは確かだ」と確認すること2回。(笑)
あんなにがっつり1番で2番を歌う*2のも珍しい気がします。

5. REUNION

皆川さんの奏でるイントロが本当に厳かでカッコイイんですよね。それでそのまま曲に引き込まれるというか、お坊さんが読経するのを神妙に聞く体勢になるというか。
スクリーン映像がサイバーチックだったのは、初披露が「CYBERロマンスポルノ」だったから、ですよねきっと。

6. 俺たちのセレブレーション

「ダイキャス」以来に聴きました。やっぱり25周年のお祝いだし、この曲は外せないですよね。
スクリーンにこれまでのライブ映像がたくさん流れるという演出も憎いなと思いました。

7. アニマロッサ

ライブで初めて聴きました!
音源よりもややアダルティな雰囲気でライブならではのアレンジで素敵でした。
間奏のソロ回しもよかったなあ……

8. メリッサ

まさかの連続アニソン。
埼玉のときはここでミュージック・アワーでした。

9. Sheep~Song of teenage love soldier~ (Acoustic ver.)

ライブでフルで聴いたのは初です。アコースティック・アレンジで一途な恋心の切なさみたいなのが増幅されていたような気がして、好きなアレンジでした。

10. ジョバイロ (Acoustic ver.)

アコースティック・アレンジだったのでいつも以上にハンドクラップが響いてて凄かった。

11. フラワー

『暁』収録だけどツアー「暁」ではやってなくて「UNFADED」以来ですかね?
スクリーンの映像が初めはモノクロだった*3のが「光あふる」からカラーになった*4のは、しっかり歌詞とリンクしてて素敵でした。

12. 夜間飛行

花道からスクリーンにかけて滑走路に見立てて、離陸したのち夜景の映像を一通り楽しんでからまた滑走路に着陸するという演出がこれもまた曲の通りで素敵でした。(2度目)

13. オレ、天使

夜間飛行が終わって、インタールードがあってからのこの曲。「暁」ツアーもそうでしたけど、インタールード自体が曲として完成していて、普通に音源としてリリースしてほしいレベルです。(笑)
さて、「キング&クイーン」の「こんな時代 周りはほら 暗い話題ばかりで」の歌詞といい、この曲といい、「解放区」といい、なんだか彼らの伝えたいメッセージがこの辺に込められているような気がしてならないです。

14. 170828-29

かと思えばやってくるこの曲。スクリーン映像では神殿がミサイルで破壊され、でもどこかゲームチック*5な現実味のない映像で。
でもまさに「ゲーム感覚」で核ミサイルが飛ばされたら……と思うとちょっとゾッとします。

15. アビが鳴く

その流れでこの曲。セトリの全曲中一番厳かな雰囲気で聴いていました。さっきはゲームチックだったのに、今度は戦闘機が飛ぶような、両手いっぱいに銃弾を抱えるような「リアル」な戦場の映像。
だからこそ、「平和を祈る想いだけは」なくしちゃダメだし、ピースサインが「俺らの持つ武器」になりうるんですよね。

16. 解放区

新曲。冷静に歌詞を聞いていて、今日披露された曲の「夜/暗闇要素」の強さに改めて驚きました。*6
この曲は「夜の女王」だし、「暗闇を恐れて」いたり、「丸い月」が出てきたり、「夜間飛行」したり……
晴一が曲前のMCで「明日より今日、そこよりここに良いことは転がってる」という話をしていましたが、まさに「REUNION」の「其処と此処を分かつ」なわけで、でも「アニマロッサ」では「何色の明日を呼ぶ」か分からない運命の鐘が鳴るけれども「君がここに居ることで」自分が自分である意味を知るわけで……
これぞ「始まりと終わりが完全な円に閉じられた状態」ということ……!?

17. 空想科学少年

けっこうライブで披露されてるのに自分は今回のツアーでやっと聴けました。めちゃくちゃ嬉しかったです。

18. ハネウマライダー

この曲がくると、ライブもいよいよ終盤なんだな、って気持ちになります。

19. アポロ

「頭ん中バグっちゃってさぁ」を2回歌ってた昭仁。(笑)
定番のコーラスのある曲だけでなく「アポロ」まで歌える日が来るなんてと感慨もひとしおです。

20. サウダージ

そういえば「暁」ツアーではやってなかったからライブでは「続ポル」ぶりなんですよね。でもそんな感じもしないくらい貫禄のある曲です。

21. オー!リバル

うねるような「オーレーオーレーオー」が凄かった……
気持ち良さそうに笑顔でギターを弾いてた晴一が印象的でした。

22. アゲハ蝶

ここからアンコール。「アゲハ蝶やらないなんて珍しい」と思ってたら、ポルノ2人でアコギ演奏のみ、ドラム(パーカッション)代わりに観客の手拍子。今日の昭仁やtasukuさんではないですが、きれいに揃っててポルノファン半端ないと思いました。
そしてラストサビの転調を忘れてしまった晴一、曲終わってからずっとバツが悪そうにしてたのがレアなもの見れた感あります。(笑)
晴一が分かりやすくミスることって全然ないですからね。

23. ジレンマ

ソロ回しのとき、サポメン全員にちゃん付けしてた昭仁お茶目すぎたし、寛雄さんのベース格好よかったし、tasukuさんのギフト爽やかすぎでした。



こう思い返してみると、ライブの中盤の流れはかなり鳥肌モノでした。
まるでゲームのように簡単に破壊される神殿(170828-29)からのリアル戦闘機の映像と平和への祈り(アビが鳴く)、そして再建される神殿(解放区)。それが「100年後/100年先」(オレ、天使/アビが鳴く)で繋がる……

25年やってるからこそ、こんな演出ができるんですよね。晴一は「お互い様だからね!」って言ってましたけど。(笑)

あとは、アコースティック・セクションに入る前、準備の間のトークでデビュー前上京してからの下積み時代の話の最中、
晴一「あのほら、グラムロックの……」
昭仁「デビッド・ボウイ?」
晴一「いや、T-BOLANじゃなくて……ええと……」(と言いながら"20th Century Boy"をワンフレーズ弾く)
昭仁「ああ、T. Rexね!」
晴一「名前は出てこんのにギターフレーズは出てくる(笑)」
ここで二人して膝から崩れて素で笑ってたあの空間、平和でした。あの瞬間、二人は因島でバンドやってた頃に一気に戻ってたんじゃないかな……これも25年やってるからこそですね。


*1:今回の記事タイトルから埼玉スーパーアリーナは省略してしまっていますが……

*2:Bメロとサビ全部まるっと間違えてました。

*3:ステージのライティングも単色だった。

*4:ステージのライティングも一気にカラフルになった。

*5:最後に出てきた曲タイトルのフォントはゲーム用のフォントでした。解放区の1番の歌詞もゲーム用のフォントでした。

*6:一方で「光」要素もありますが……

ペット・ショップ・ボーイズ「Through You (extended mix)」を和訳。

ペット・ショップ・ボーイズの4月リリースになる最新アルバム'Nonetheless'からのファーストシングルである"Loneliness"のカップリング2曲目、"Through You (extended mix)"を和訳しました。

"Loneliness"の和訳記事で「("Loneliness"の)ビートの部分は"Transparent"を思わせるようなものになって」いると書きました(※個人の感想)が、この曲は歌詞が"Transparent"直系です。あちらは Wish I were transparent / You could see right through me と「自分が透明人間だったらいいのになあ……」*1という思いを歌っていますが、今回はそんな「微笑ましい」ものではなさそうです……
そして"Transparent"でのヴォーカルはヴォコーダーを通したようないわゆる(?)「ロボットヴォイス」になっていましたが、この曲でも最初の部分でヴォコーダーを通したような「歪み」がありますね。

youtu.be

I’ve seen through you
I can read your thoughts
Chart your motivation
Anticipate your course

僕は君のことがずっとお見通しだった
君の心を読み取れるし
モチベーションを図表化したり
君の進路を予測したりできる

I’ve seen right through you
I’ve seen right through you
I know the true you
I’ve seen right through you

僕は君の魂胆を
ずっと見透かしてきた
本当の君を分かってるんだよ
君のことがずっとお見通しなんだ

I’ve seen right through you
I’ve seen right through you
I know the true you
I’ve seen right through you

僕は君の魂胆を
ずっと見透かしてきた
本当の君を分かってるんだよ
君のことがずっとお見通しなんだ

It’s not enough to succeed
others must fail
There is your mantra
bitter and stale
It’s not enough that you win
others must lose
Dreams have to die
What’s your excuse?

成功するだけでは十分じゃなくて
他の人たちが失敗しなきゃいけない
苦く古臭くなった
君のマントラがある
勝つだけでは十分じゃなくて
他の人たちが負けなきゃいけない
夢は消えてなくなる必要がある
言い訳はなんだい?

I’ve seen right through you
I’ve seen right through you
I know the true you
I’ve seen right through you

僕は君の魂胆を
ずっと見透かしてきた
本当の君を分かってるんだよ
君のことがずっとお見通しなんだ

It’s not enough to succeed
others must fail
There is your mantra
bitter and stale
It’s not enough that you win
others must lose
Dreams have to die
What’s your excuse?

成功するだけでは十分じゃなくて
他の人たちが失敗しなきゃいけない
苦く古臭くなった
君のマントラがある
勝つだけでは十分じゃなくて
他の人たちが負けなきゃいけない
夢は消えてなくなる必要がある
言い訳はなんだい?

I’ve seen right through you
I know what you are
and how fake the compassion
in your repertoire

君のことはずっとお見通しだった
君が何者なのか
君のレパートリーの中にある
同情心がどれだけ偽りなのかも

The power grabs so bald
The envy so crude
Your obsession with status
The violent moods

権力はとてもハゲしい
粗雑な羨望
地位への執着
暴力的な気分

I’ve seen right through you
I’ve seen right through you
I know the true you
I’ve seen right through you

僕は君の魂胆を
ずっと見透かしてきた
本当の君を分かってるんだよ
君のことがずっとお見通しなんだ

I’ve seen right through you
I’ve seen right through you
I know the true you
I’ve seen right through you

僕は君の魂胆を
ずっと見透かしてきた
本当の君を分かってるんだよ
君のことがずっとお見通しなんだ

It’s not enough to succeed
others must fail
There is your mantra
bitter and stale
It’s not enough that you win
others must lose
Dreams have to die
What’s your excuse?

成功するだけでは十分じゃなくて
他の人たちが失敗しなきゃいけない
苦く古臭くなった
君のマントラがある
勝つだけでは十分じゃなくて
他の人たちが負けなきゃいけない
夢は消えてなくなる必要がある
言い訳はなんだい?

I’ve seen right through you
I’ve seen right through you
I know the true you
I’ve seen right through you

僕は君の魂胆を
ずっと見透かしてきた
本当の君を分かってるんだよ
君のことがずっとお見通しなんだ

It’s not enough to succeed
others must fail
There is your mantra
bitter and stale
It’s not enough that you win
others must lose
Dreams have to die
What’s your excuse?

成功するだけでは十分じゃなくて
他の人たちが失敗しなきゃいけない
苦く古臭くなった
君のマントラがある
勝つだけでは十分じゃなくて
他の人たちが負けなきゃいけない
夢は消えてなくなる必要がある
言い訳はなんだい?


↓表題"Loneliness"の和訳です。
pgrobert.hatenablog.com


↓"Party in the Blitz"の和訳です。
pgrobert.hatenablog.com

*1:ここでも仮定法が使われていますね!