今からちょうど100年ほど前、欧米諸国で猛威を振るっていたスペイン風邪。
上の画像はその最中の1918年11月25日、アラスカの新聞"Douglas Island News"に載ったものらしいのですが、
インフルエンザ予防のための注意事項
・マスクの着用
・清潔で健康な生活を送ること
・毛穴を開いたままにすること―頻繁に入浴する
・食事の前の手洗い
・昼も夜も大量の新鮮な空気の中で生活すること
・暖かくすること
・睡眠量の確保
・頻繁に(外出後はいつでも)食塩水でうがい(8オンスのグラス1杯に食塩小さじ1/2)
・初期症状を医師に速やかに伝えること
・防疫規制を尊重すること
・人ごみを避けること――インフルエンザには、感染した人の近くにいる時にだけかかる
・鼻をすすったり咳をしたりしているひとを避けること
・マスクをつけ忘れないように
・理解できないからと専門家の忠告を無視しないように
・コミュニティの権利を無視しないように――当局によって出されたルールには喜んで従うこと
・特権を持つ資格があると考えないように
・風邪をひいていたり熱があったりするなら他人の近くに寄らないこと――彼らをインフルエンザそして死にさらすかもしれない。医者の診察を。
・インフルエンザに感染したり感染させたりすることが不可能だと考えないように
・手を口から離すこと
・開かれたところでせきやくしゃみをしないこと
・公共のタオルやコップを使わないこと
・病人の元を訪ねたり、病室にあった家具を扱ったりしないこと
・心配するな。
こうして見ると、スペイン風邪流行期のこの注意は今のコロナ禍にあっても通じるものがあります。
他にも当時の新聞や広告などでこうしたものがないかを色々調べてみました。
・行動抑制系
最初に紹介した"Douglas Island News"もそうですが、「インフルエンザを防ぐためにしてはいけないこと(するべきこと)」系はかなりたくさん見つかりました。
まずは、1918年9月21日の"The Sun"*1から。
インフルエンザでの一部禁止事項
健康局はスペインのエピデミックの拡散を防ぐだろう(AP通信による)
セントルイス、9月20日――咳したり、くしゃみしたり、唾を吐いたりキスしたりしないこと。
簡単に言えば、これは、現在東部といくつかの郡の宿営地で流行しているスペインのインフルエンザのエピデミックを防ぐための保健局の勧告だ。
予防措置として、次の「禁止事項」のリストが発行されている。「ハンカチが口を保護しない限り、咳やくしゃみをしないこと」
「公共の場所、または家の周辺で唾を吐かないこと」
「インフルエンザにかかっている場合は、他の誰とも一緒に部屋で寝ないこと」
「家族のメンバー、特に赤ちゃんにキスをしないこと」
「マットレスが適切に空気にさらされ、日光にさらされていない限り、誰もあなたのベッドを占有しないようにすること」
「インフルエンザにかかっている場合は、誰にもあなたを訪ねさせないこと」
「あなたが病気に苦しんでいるならば、あなたの家族の誰もがあなたが使っていたのと同じタオル、飲用容器または食器を使用することを許可しないこと」
次は、1918年12月11日"The Milwaukee Journal"より。
インフルエンザ予防のためのルーラント医師の規則
可能であれば、歩いて通勤する
咳やくしゃみをする人を避ける
咳やくしゃみをするときはハンカチで鼻や口を覆う
食事の前に手を洗う
昼も夜も新鮮な空気をたっぷりと吸う
共用のタオルは使用しない―病気が広がる
混雑した場所に近づかない
おいしい、普通の食べ物をたくさん食べる
健康には睡眠が必要―過度の努力は避ける
インフルエンザの症例がある家には近づかない
病気の場合は、どんなに軽くても、医師の診察を受ける
もしインフルエンザにかかったら、医師が安全に起き上がることができると言うまでベッドにいる
心配は有害です―心を落ち着かせてくださいジョージ・C・ルーラント(医学博士)
ウィスコンシン州ミルウォーキー保健委員上記の一連のルールを注意のカテキズムにする
これはあなたの戦いです!あなたの役割を果たしてください!
次は、掲載誌は分からないものの、注意広告。
自分を救おう
インフルエンザや
肺炎、悪い風邪、はしか
結核、ジフテリア、デング熱
百日咳、髄膜炎、おたふく風邪 から2つの簡単なルールに従おう
ルール1
咳やくしゃみをするときはいつでも、頭を下げたり、ハンカチを口や鼻にかけたりすること。
ルール2
指や鉛筆など、そこに属さないものを口に入れたり、共用の飲用コップを使用したりしないこと。
《安全》
咳やくしゃみをするときはハンカチを使う
もしくは頭を地面に向ける《危険》
鉛筆や指を口に入れない
共用の飲用カップを使用しない
または他の人に向かって空気中に咳やくしゃみをしないこれらの病気の病原菌は、病気の人や保菌者の口や鼻の分泌物を通して広がります。
バージニア州保健委員会による提供
「インフルエンザ」が増加している
誰もこの病気の原因を知らない
フランスで失われた軍隊の2倍もの人が去年アメリカで亡くなっているもし安全でいたいなら
1.病気の人から離れること、特に咳やくしゃみをしていたら
2.咳やくしゃみをするときはハンカチを使うこと
3.混雑した路面電車、電車、家は避けること
4.床に唾を吐かないこと
5.食事の前に手を洗うこと
6.指を口に入れないこと
7.共用のコップは避けること
8.ほこりの多い場所に近づかないこと
9.気分が悪い場合は、プラントドクターに相談すること
あとはいくつか画像。
・インフルエンザについて知ろう!
そもそも「インフルエンザはジョークじゃない!」っていうそのものズバリの記事。
「どのようにしてそれを避けるか」
「インフルエンザについて、知っておくべきこと」
・マスクをつけよう!
赤十字が出してた広告なんかも見つかりました。ほぼ同じ文言で何パターンかあったようです。
その中の一つ、1918年9月24日、"The Humboldt Times"*2の広告。
マスクを着用してあなたの命を救おう!
現在私たちの街が直面している緊急事態は、保健局の設備を超えています。
赤十字
は保健委員会の支援を受けています。苦しんでいる人の世話をするために医師や看護師を得ることができません。自分自身だけでなく、子供や隣人をインフルエンザ、肺炎、死から守るために、マスクを着用しなければなりません。ガーゼマスクはインフルエンザに99%対抗できると証明されています。
医師はマスクを着用しています。マスクを身に着けていない人は病気の人です。今マスクを着用しない男性、女性、子供は危険な怠け者です。
マスクの着用を!
この声明は、エピデミックを撲滅する唯一の方法であると確信している署名者の会議で承認されました。あなたは自分の役割を果たさなければなりません
1918年11月8日、"The Edmonton Bulletin"*3に載った広告。
シアトルではマスクを着けてないと乗車拒否をされたようです。
カリフォルニアで撮られたらしい写真。右端の女性が首からぶら下げている看板には「マスクを着けよう、さもなければ刑務所行きだ」と書かれています。
1918年11月18日、インディアナ州では保健委員会がマスク着用を義務づけると同時に学校の閉鎖も決めて、翌日の"Indianapolis Star"にはこんな記事が載りました。
1918年10月4日の"The Seattle Times"。
そして1918年10月10日の"Wisconsin State Journal"。
こんな風に、スペイン風邪が流行ってた当時は、学校や教会が閉鎖される一方でけっこう色んなアメリカの都市で「マスク着用条例」が出されていたみたいです。特に厳しかったのがサンフランシスコで、マスクに反対する運動"Anti Mask League"ができるほど。
こうして見ると、今回のコロナ禍でも、学校の休校どころか都市の封鎖(=ロックダウン)があったり、マスクに対する反対運動が起こったリ、まさに「歴史は繰り返す」を地で行っているのがよく分かります。
今後3週間で状況が改善しなければまた緊急事態宣言が出るかも、という今の日本、果たしてどうなる……?