pgrobertのブログ

好きな音楽や美術について。ときどき脱線。

ペット・ショップ・ボーイズ「Viva la Vida / Domino Dancing」を和訳。

今年もクリスマスがやってきました。
そこで今回は、ペット・ショップ・ボーイズが2009年にリリースした'Christmas'より"Viva la Vida / Domino Dancing"を和訳しました。
元々、'Yes'(2009)リリースに伴うツアー*1で"Se a vida é / Discoteca / Domino Dancing / Viva la Vida"という4曲メドレーで披露されていたものが切り出されてスタジオ録音として音源化された形になっています。
アレンジはStuart PriceとPSB。スチュアートとは既にこの頃から関わりがあったんですね。*2

youtu.be

youtu.be

Watch them all fall down
Watch them all fall down

奴らが倒れるのを見てみろよ
奴らが倒れるのを見てみろよ

I used to rule the world
Seas would rise when I gave the word
Now in the morning I sleep alone
sweep the streets I used to own

Watch them all fall down

僕はかつて世界を支配していた
僕が口を開けば海はせり上がった
今では朝独りで眠り
かつて自分のものだった通りの掃き掃除をしてる

奴らが倒れるのを見てみろよ

I used to roll the dice
Feel the fear in my enemies’ eyes
Listen as the crowd would sing
“Now the old king is dead
Long live the king!”
One minute I held the key
next the walls were closed on me
Now I discover that my castles stand
upon pillars of salt and pillars of sand

僕はかつて賽を振っていた
敵の目に浮かんだ恐怖の色を感じてたし
群衆がこう歌うのを聞いていた
「今や古き王は死んだ
王様万歳!」
いっときは鍵を抱えていたのに
次には壁がせり上がってきた
そして気付いたんだ、僕の城は
塩の柱と砂の柱の上に立ってるんだって

I hear Jerusalem bells are ringing
Roman cavalry choirs are singing
Be my mirror, my sword and shield
my missionaries in a foreign field
For some reason I can’t explain
I know Saint Peter won’t call my name
Never an honest word
and that was when I ruled the world

Watch them all fall down

エルサレムの鐘が鳴っているのが聞こえる
ローマ軍の騎兵隊が歌っているのも聞こえる
僕の鏡に、剣に盾になってくれ
異国の地の宣教師になってくれ
どうしてだか説明できないけれど
聖ペトロは僕の名前を呼んでくれないみたいだ
何一つ正直な言葉が出てこない
それが世界を支配していた頃の僕だった

奴らが倒れるのを見てみろよ

It was the wicked and wild wind
blew the doors to let me in
Shattered windows and the sound of drums
People couldn’t believe what I’d become
Revolutionaries wait
for my head on a silver plate
Just a puppet on a lonely string
Oh, who would ever want to be king?

邪で激しい風が吹いて
ドアを吹き飛ばし僕を招き入れた
粉々になった窓と太鼓の音
人々は信じられないだろう 今の僕のザマを
革命家たちは待っているのさ
銀の盆に載った僕の首を
たった一本の糸で吊るされた単なる操り人形
ああ、誰が王になろうなんて思うだろう?

I hear Jerusalem bells are ringing
Roman cavalry choirs are singing
Be my mirror, my sword and shield
my missionaries in a foreign field
For some reason I can’t explain
I know Saint Peter won’t call my name
Never an honest word
and that was when I ruled the world

Watch them all fall down

エルサレムの鐘が鳴っているのが聞こえる
ローマ軍の騎兵隊が歌っているのも聞こえる
僕の鏡に、剣に盾になってくれ
異国の地の宣教師になってくれ
どうしてだか説明できないけれど
聖ペトロは僕の名前を呼んでくれないみたいだ
何一つ正直な言葉が出てこない
それが世界を支配していた頃の僕だった

奴らが倒れるのを見てみろよ


原曲はコールドプレイ。彼らのアルバム'Viva la Vida or Death and All His Friends'(「美しき生命」、2008)に収録されています。そのジャケットに使われているのがドラクロワの「民衆を導く自由の女神」。そんな訳で、歌詞はフランス革命と関係があるのではないかと言われています。*3
バンドは特定のモデルがいるとは公言していませんが、ルイ16世やナポレオンがモデルではないかと言われています。

さて、クリスマスといえばキリストの生誕を祝う日。キリスト教徒にとっては重要な日です。この曲はそんなキリスト教徒の経典、聖書からの引用が随所に見られます。


まず'Seas would rise when I gave the word'は、出エジプトで指揮を執ったモーセのこと。


次に"Now I discover that my castles stand / upon pillars of salt and pillars of sand'。
「pillars of salt」塩の柱は、男色はびこるソドムの町を神が滅ぼすとき、ロト一家だけは逃がそうとした。その時「決して後ろを振り返ってはいけない」と言われていたのにロトの妻は振り返ってしまい、塩の柱になってしまった。という話から。
「pillars of sand」砂の柱は、砂上の楼閣とも訳されます。元は、マタイによる福音書(7:26-27)にある山上の垂訓より、
「わたしのこれらの言葉を聞くだけで行わない者は皆、砂の上に家を建てた愚かな人に似ている。雨が降り、川があふれ、風が吹いてその家に襲いかかると、倒れて、その倒れ方がひどかった」

"I know Saint Peter won’t call my name"
これもまた、マタイによる福音書(16:19)より
「わたしは、あなたに天国のかぎを授けよう。そして、あなたが地上でつなぐことは、天でもつながれ、あなたが地上で解くことは天でも解かれるであろう」
この場面でイエスはペトロに天国の鍵を渡しました。つまり天国に行くにはペトロの許可が必要ということ。だから聖ペテロに名前を呼ばれなければ天国には行けない……

"Revolutionaries wait / for my head on a silver plate"
「銀の盆に載った首」とは、洗礼者ヨハネの首のこと。
洗礼者ヨハネはイエスよりも先に人々に説教をしていた人物。そんなヨハネの元にイエスが洗礼を受けにやってきた時のエピソードは「イエス=神の子」を示す上で重要な場面です。
そのヨハネは斬首されて、当時の王・ヘロデの娘であるサロメに献上されました。



自分が浪人生だったころお世話になった予備校の先生が「欧米の文化を知るにはキリスト教ギリシャ神話、マザーグースシェイクスピアは必須の教養」と言っていましたが、この曲を聴くたびにその言葉を思い出します。

*1:Pandemonium Tour。

*2:もっと遡れば、マドンナといえば'Confessions on a Dance Floor' (2005)のプロデューサーがスチュアートで、PSBも"Sorry"のリミックスに参加。

*3:実際歌詞にRevolutionariesと出てきますし。